東京高等裁判所 昭和40年(う)1166号 判決
被告人 萩原一雄
〔抄 録〕
所論は、本件は昭和三七年三月二七日付で原判決の別表甲2の事実が起訴され、ついで同年四月一九日付でその余の事実が一括して起訴され、検察官はこの二個の起訴にかかる事実を一罪と主張し、原判決も一罪と認定しながら右後者の起訴につき判決で公訴を棄却すべきであるのに、これをしないでその理由で「……一罪と認めたのでその一つにつき主文において特に公訴棄却の言渡をしない」と説示したことは、訴訟手続の法令に違反があつて、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであると主張するものである。
しかし、記録に徴すれば、本件犯罪は包括一罪を構成するものであるところ、本件には二通の起訴状(昭和三七年三月二七日付起訴状、同年四月一九日付起訴状)が存在するので、これらの書面からみれば一罪につき重複して起訴されたような観があるが、検察官の原審公判廷における本件起訴は全部につき単一意思の包括一罪の関係にあるものであるとの釈明によれば、後の起訴状は前の起訴状に洩れたものを追加補充する趣旨でなされたものであつて、一つの犯罪に対し重ねて公訴を提起したものでないと解するのが相当である。原判決の理由は右といささか説明を異にするものがあるが、結局において正当である。(最高裁判所昭和三一年一二月二六日判決、判例集一〇巻一二号一七四六頁参照)論旨は理由がない。
(足立 栗本 浅野)